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 暗喩量産三島様2

眉が秀で、顔は浅黒く、固く結んだ唇の一線に、刃を横に含んだような感じがある。たしかに飯沼の面影を宿してはいるが、あの濁った、重い、鬱した線を、ひとつひとつ明快に彫り直して、軽さと鋭さを加えたという趣がある。『人生について、まだ何も知らない人間の顔だ』と本多は思った。『降り積もったばかりの雪が、やがて溶けもし汚れもしようということが信じられないでるいるときの顔だ』

 このまま逃げるように帰ったほうがいいと思う。そうすれば、一時の非礼は若者の気紛れととられ、あとになって別れの真意が察せられるだろう。玄関の仄暗い灯りが勲の感情を巧く隠している間に。
 沓脱ぎ石はしらじらと浮き上がり、式台は船着のように、澱んだ冷たい闇に接している。自分は出港する船だ。式台の縁もまた、そこで人が拒まれ、受け容れられ、あるいは別れる折り目正しい埠頭だ。そして自分は感情の積荷をぎりぎり積んで、喫水線まで、冬の海の死の闇に浸っているのである。
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